ゲーム制作や小説の執筆をはじめると、「どんなに短くてもいいので、まずは1本完成させてみよう」とよくいわれます。
これはまさにその通りで、私もそれで「作品を最初から最後までつくる」という感覚を知り、以降の制作にも生きていると思います。
が、制作や執筆を続けていると、今度は「次の作品を形にする難しさ」に遭遇することがあります。
- 新作の制作に入ったが、なかなか筆がのらず、難航している
- あれこれと考えてしまい、作業がなかなかすすまない
- 最初のころは勢いで完成させていたのに、今はやたらと時間がかかるようになった
いずれも私自身が経験したことですが、同じ悩みを持っている方も多いのではないかと思います。
そこで回は、あくまで私なりのアプローチではありますが、「経験を重ねているはずなのに、なぜ次の作品の制作に苦労するのか」という点について書いていきます。
興味のある方はよかったら参考にしてみてください。
自分の前作・過去作と比較してしまう
私がよく苦労したのは、ことあるごとに「自分の前作や過去作と比較してしまう」という点です。
これは過去作がある以上、避けられない点ではあるのですが、こだわりすぎると制作が行き詰まる原因になりやすいように思います。
「このアイデア、前の作品と一緒じゃん」→ボツ
私がよくハマったのはこの点です。
何か思いついても、過去作と少しでもかぶっていると感じたらどんなことであれ問答無用でボツにしていました。
だけど、実は過去作とかぶっていてもよいアイデアってあるんですよね。
たとえばシナリオの骨組み。
海外の映画が好きな方なら耳にしたことがあるかと思いますが、「開始から〇分あたりで××が起こり、△分あたりで■■が起こり~」といったシナリオ構成のよいとされるテンプレート(ノウハウ)というのがあるんですよね。
あくまでテンプレートなので、もちろん作品になる際にはそこに装飾やアレンジが加わるわけですが、面白いことに話のテーマやジャンルが違うと、たとえ同じテンプレートに沿ってつくられたものだとしても、それを感じさせないんですよね。
だけど、個人でゲーム制作や小説の執筆を行っていると、「あれ、この話の流れって前に作ったのと同じ展開じゃん。ダメだダメだ、ボツ」とやたらと過敏になってしまう。
これってすごくもったいないことだと思うんですよね。
このような時は、即ボツにするのではなく、実は
- じゃあ、同じ展開に感じさせない工夫をしてみよう
という選択肢もあったりします。
特に、その展開が物語にとってよい流れであれば、この方法は有用で、ボツにして無理矢理ひねり出したようなアイデアに差し替えるよりも、よっぽどいいように思います。
シナリオの骨組みに関しては、あくまで一例ではありますが、制作や執筆をしていると、こうした問題に遭遇することが随所にあったりします。
過去作とかぶっていてもよいアイデアもある――この考え方を持つだけで、ずいぶんと楽になる部分が出てくると思います。
▼脚本について興味深いことが書かれている1冊です。
前作・過去作と設定をガラッと変えて大苦戦
私の場合、キャラクターでこれをやってしまい、筆がまったくすすまなくなり、制作が本当に苦しくなったことがあります。
私がやってしまったのは、例にすると次のような感じのことです。
- 前作は明るくて活発なキャラクター(主人公)だった。
- じゃあ、今度は正反対の性格のキャラにしたら面白そうだな。
- よし、無口でクールなキャラにしよう。
あくまで例ではありますが、これをやって大苦戦しました。
これ、一見すると、前作とガラッと変わってよさそうな気がしますよね。
が、実際にやってみると、キャラに入り込めない・キャラが動かしにくい・話に勢いがついてこない……などなど、非常に苦しい制作となりました。
原因を書いてみます。
キャラを思いついた経緯に問題がある
根本的に大きな問題だったのは、キャラを思いついた経緯です。
上で挙げた例であれば、「前作では明るくて活発なキャラだったから、今度は正反対な性格にしたら面白そうだな」という点ですね。
それで「無口でクールなキャラ」に決定しました。
一見すると、何もおかしくないように思えますが、よく考えてみると、これ、「正反対だったら面白いかな」と思っているだけで、別にそのキャラを書きたいわけじゃないんですよね。
当然、「そのキャラでなければいけない」という理由もありません。
乱暴な言い方をすれば、「前と正反対な性格ならなんでもいい」ってことをやっているだけなんですね。
それだけの理由で生まれたキャラなので、記号的なキャラになりやすいですし――しかもそれを主人公でやってしまったのですから、「そりゃあ、生きたキャラになりにくいよな」となってしまったわけです。
対策
上で挙げた例の問題点は、キャラクター(主人公)を考える際に前作との違いを意識しすぎた点にあります。
しかも、その発想が単純すぎたのも原因で
- 前作と変えよう → よし、前作と正反対の性格のキャラにしよう
というだけの考え方ですすめてしまい、制作の難航につながってしまいました。
ここでのポイントは、「違いの考え方」ですね。
具体的には「前作と性格を正反対にする以外にも、前作との違いを出す方法はあったのではないか」という点です。
たとえば、前作が「明るくて活発なキャラクター」であったなら、性格はそのままでも
- 名前や容姿を変えてみる
- 物語の舞台を変えてみる
- まわりの人間関係を変えてみる
といったことをすれば、前作との違いを出せます。
前作と性格が同じでも、飛び込む環境が変われば、それによって取る行動も変わってきます。そう、これだけでもちゃんと前作との違いが出るんですよね。
あるいは、前作の「明るくて活発なキャラクター」という性格を生かして、そこにもう1つ要素を加えてみる。
これはなんでもいいですね。「明るくて活発なキャラクターだが、ある条件がそろうと……」とか「明るくて活発なキャラクターだが、見た目とは大きなギャップがある」などなど、ちょっと加えるだけでも前作との大きな差異ができます。
あるいは、「明るくて活発なキャラクター」という性格はそのままで、このキャラを思い切って、狂言回しにするという方法もあります。主に話を動かす・転がす役割ですね。
コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」でいうところのワトスン役にすれば、その目線で物語を進められますので、実質「主役」的な雰囲気で書けるのではないかと思います。
気が楽になる話
私は読書が好きで、気になる作品があると、その作家が過去に刊行した本を一気に何冊も読むことがあります。
そういう読み方をしていると、多くの作家には「話の展開にパターンがある」があることがわかってきます。
ある作家の本は7冊ぐらい読んだのですが、どの作品も話の展開がまったく同じパターンだったことがありました。
また、気持ちを入れて創作している方ほど「どうなんだ?」と感じる部分があるかもしれませんが、「物語のしくみ」を書いたこんな本もあります。
こうしたことを知る、あるいは考えていくと、「自分の中で無駄にハードルをあげてしまっている部分が多いのでは」ということに気づきます。
特に創作は、「何から何まで自分で生み出さなければならない」「過去作と変えなければいけない」という思いが自分の中でつきまといやすいジャンルかと思います。
2作目以降になると、つい忘れてしまいがちですが、初めて作品をつくったときの気持ち――「たのしいからつくる」「おもしろそうだからつくる」という思いは変わらなくていい部分ではないかなと思います。
行き詰ったときこそ
作品をつくり続けていると、制作に行き詰まることも出てきます。
そんなときこそ、初めて作品をつくるときによく聞いた言葉、「どんなに短くてもいいので完成させてみよう」は重要なのではと思います。
つい「前作よりも充実したものを」「過去作よりもボリュームがあるものを」と考えてしまいますが、長編を書く小説家だって、短編を書いたりしますよね。
「どんなに短くてもいいので完成させてみよう」この言葉ってすごく大事だなと思います。
記事で紹介した本・ツール
今回の記事で紹介した本やツールは次の通りです。
【SAVE THE CATの法則】
【シャーロック・ホームズ・シリーズ】
【プロだけが知っている小説の書き方】
【RPGツクールMZ】