WEB関連の仕事をしていると、キュレーションサイトの実態を知る機会が多々あります。
キュレーションサイトとは、かんたんに言えば『パクリまとめサイト』のことです。
企業が安いライターを大量に動員して記事を書かせていることが多く、各記事はいろいろなブログやサイトからパクることで構成されています。
こうしたサイトは検索上位に表示されることが多く、つい見てしまうこともありますが、実際に読んでみると
- 長いわりに中身がスカスカ
- 書いてあることに間違いが多い
- 実際に体験していないのに書いている
- 内容はパクリだらけ
と感じさせるものがあふれており、ろくでもなさを感じている方も多いかと思います。
そこで今回は、あくまで私が知る範囲でですが、『キュレーションサイトはなぜゴミ記事だらけなのか』をお届けします。
キュレーションサイトはなぜパクリ記事だらけなのか
まずは、キュレーションサイトにパクリ記事があふれている理由から解説します。
かんたんに言うと、パクって書くことがマニュアルになっているからです。
ソースは検索上位記事
キュレーションサイトは、大前提として『検索上位に表示される記事』をソースにしています(サイトによっては、それにプラスしてQ&Aサイトなどの情報をソースにすることもあります)。
そういったしくみのため、検索上位に表示される記事は思いっきりパクられます。
また、検索上位の記事に書かれている内容を網羅することもマニュアル化されています。
たとえば『検索○位までの記事の内容をすべて盛り込みなさい』みたいな感じですね。
これで他のサイトよりも文字数や情報量が多くなり、(検索エンジンから見て)ユーザーが求めている情報を網羅した『検索エンジン好みの記事ができあがる』というわけです。
実体験はまったく必要なし!
キュレーションサイトを見ていると、
- その場所に行ってもいないのに、おすすめ旅行スポットを書いている
- 使ってもいないのに、商品のおすすめランキングを書いている
- 実際にやっていたら分かるはずのことを間違えている
と感じる記事が驚くほど多くあります。
これも理由は上と同じです。
ソースはあくまで検索上位記事(+Q&Aサイトなど)であり、ライターはそれらを網羅したものを書くことを求められています。
そう、そのジャンルの知識や実体験は求められていないんですね。
仮に、そのジャンルに詳しい人が「検索上位の記事は根本的におかしいから、ちゃんとした記事を書くぜ!」とオリジナリティにあふれた記事を書くと、ボツを食らいます。
パクっているのになぜペナルティを受けないのか
ここまで読んでいただいた方は、「なぜそんな記事の作り方が許されるのか」「なぜ検索エンジンからペナルティを受けないのか」と感じる方もいるかと思います。
これは非常にいやらしいやり方なのですが
- コピペ判定されないように書く
ことがマニュアル化されています。
要は、記事の内容をパクって、コピペと言われないように書き換えるわけです。
また、文章はただ書き換えるだけでなく、ツールを使ってコピペの度合いをチェックします。
コピペの度合いは、たとえば「コピペ判定」「コピペ チェック」で検索すると出てくるようなツールを使って確認します。
このようにすれば、パクっていることが丸分かりの記事でも、機械判定はすり抜けられるというわけですね。
キュレーションサイトはなぜゴミ記事だらけなのか
キュレーションサイトを見ていると、そのジャンルを少しでも知っていたら「明らかにおかしい」と感じる記事が数多くあります。
また、商品に関しても「少しでも使ったことがあるなら、どう考えても人にはおすすめできないもの」が当たり前のようにおすすめされていることがあります。
情報に誤りが多い理由
検索上位にキュレーションサイトがいくつも表示されると、これから記事を作るキュレーションサイトは、それらに書かれている内容をパクって記事にします。
そのため、検索上位に表示されているキュレーションサイトの情報が間違っていると、ほかのキュレーションサイトもそろって同じ間違いをするという、面白い現象が起こります。
要は、情報の根拠が『検索上位にあるから』だけなんですね。
商品であれば、ライターやスタッフが実際に見たり触ったりしていないどころか、メーカーの公式情報すらチェックしていないという、びっくりするようなことが当たり前に行われています。
だから、ごく初歩的な情報が間違っていても、ライターもスタッフもそれに気づかないことが多いんですね。
機能していないチェック部門
キュレーションサイトの中には、ライターの書いた記事をチェック(校閲)する部門を設けているところもあります。
建前上は「情報が正しいものであるか」の裏づけをとり、きちんとした記事であるかをチェックすることですが、当然のことながら、その担当者にも専門知識があるわけがなく、基本的に「情報の確認方法はライターと同じ」です。
つまり、ネットで検索してチェックするだけなんですね。だから、アホみたいな間違いのある記事が平気で出てくるわけです。
そもそも担当者自体が、ライターと同じように安く集められた人たちというケースもあります。
記事のパクリに関しても、ツールを使った機械判定でチェックする程度で、内容は細かくみていません。だから、人間の目で見れば明らかにパクっている記事でも、普通に通っちゃうんですね。
そもそも、パクって記事をつくることが前提で、「Googleなどの検索エンジンにパクリと判定されなければいい」という考えなので・・・。
「いかがでしたか?」が多い理由
キュレーションサイトには、記事の終わり(まとめ)に「いかがでしたか?」という文言がよく使われます。
また、記事の書き出しには「(~といえば)~ですよね」という、妙な決めつけをした文言も多く用いられます。
どちらもあまり好まれない文言であるのにも関わらず、キュレーションサイトではよく使われます。
これには、主に次のような理由があります。
- マニュアルにある「見本の記事」がそうなっているから
- キュレーションサイトでよく使われる言い回しだから
- 文字数を稼げるから
あまりのしょうもなさに書いていてむなしくなりますが、キュレーションサイトのライターは基本的に「マニュアルに沿って、キュレーションサイトらしい記事を書く」のが仕事です。
ライター独自の言い回しやポリシーは全く求められていないんですね。
また、ほとんどの場合、1記事あたり(または見出しごとの)文字数が決まっているので、「いかがでしたか?」のように決まった言い回しを持っておくと、文字数が稼げます。
\ライターの実態についてはこちら/
でたらめランキング
キュレーションサイトには、「おすすめ○選」「○○ランキング」といった記事が多くあります。
これらの記事を見るときに注意してほしいのが、何をもとにして選んだのかという「情報の根拠」です。
たとえば、
- 誰がどのような観点で選んだのか
- どんな集計方法で出されたランキングなのか
という点に着目してみましょう。ほとんどのキュレーションサイトが、根拠を書いていなかったり、とても曖昧な基準で書いていたりすることが分かるかと思います。
この「おすすめ○選」「○○ランキング」の決め方ですが、基本的にこれまでに紹介した記事と同じつくり方です。
主に検索上位の記事(場合によっては、通販サイトなどのランキング)を参考にして、商品をピックアップします。
が、順位や商品がほかのサイトとまるっきり同じだとパクリと思われる可能性があるので、適当に順位を入れ替えたり、商品をばらけさせたりするんですね。
そのジャンルに無知なライターやスタッフが担当する場合は、もう悲劇としか言いようがなく、とんでもない商品でも思いっきりおすすめしちゃったりします(サクラレビューにもかんたんにひっかかるよ)。
キュレーションサイトの問題
Googleは(建前上)、検索エンジンの上位にある記事ほど「ユーザーが求めているもの」としています。
となれば、「検索上位の記事に書かれている内容を全て入れてしまえば最強なのでは」というのが、キュレーションサイトの考え方です。
誰の方を向いたサイトなのか
ここまで読んでいただいた方にはもうお分かりかと思いますが、キュレーションサイトは検索エンジンの方を向いて作られているサイトです。
ユーザーのために正しい情報を発信するサイトではありません。そこに書かれているのは実際に体験した人の声でも、そのジャンルに詳しい人の声でもありません。
キュレーションサイトは企業が運営していることが多く、ろくでもないことをしているのにも関わらず、「企業」というだけで「専門知識を持った個人サイト」や「情報の精度が高い個人サイト」よりも検索エンジンが評価する傾向があります。
そう、キュレーションサイトの問題は、キュレーションサイトのモラルだけでなく、検索エンジンのシステム上の問題によるところも大きいんですね。
本来のキュレーションサイトとは
本来、キュレーションサイトというのは、ネット上の情報を分かりやすくまとめたサイトのことを言います。
ユーザーのために「正しい情報」を厳選して届けるのが、もともとの役割です。当然のことながら、他サイトの情報を取り上げる時は、必ず「ネタ元」を記載するのが筋です。
が、現在ほとんどのキュレーションサイトは、元記事の内容をパクって、コピペ判定を受けない程度に書き換えたものを「オリジナルの記事」として扱っています(あるいは、オリジナルと見せかけるようにしています)。基本的にネタ元となった記事のURLは記載しません。
また、やっていることはどう考えてもパクリですが、マニュアルでは言葉遊びを駆使して、指示した側が『「パクれ」とは言っていない』と誤魔化しやすいつくりになっているものが多くあります。
まとめ
今回は、「キュレーションサイト(パクリまとめサイト)がゴミ記事だらけな理由」と題して、私が知っている範囲でありますが、実態を書いてみました。
こうしたサイトが検索上位を占めていたら、そりゃあ『ほしい情報』にたどりつけないわけですね。
キュレーションサイトについては、過去にDeNAが展開していたWELQが問題になりましたが、そこから「ごまかし方」や「抜け道の探し方」ばかりが進化して、根っこは変わっていないように思います。
こうしたサイトが上位表示されないよう、検索エンジンが改善されることを願うばかりですが、こんな状況が何年も続いていることを考えると、ユーザーは「情報を選ぶ」しか手がないんでしょうかね。
キュレーションサイトの検索汚染に困っている方は、こんな方法もあります。